大判例

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奈良地方裁判所五條支部 事件番号不詳 判決

主文

被告人を懲役壱年弐月に処する。

理由

一、罪となるべき事実

被告人は昭和三十年九月五日頃、吉野郡大淀町大字下淵パン製造業津田徳太郎方に於て、同人に対し、自己の所有する国鉄公傷年金証書一通及び該年金受領に必要な実印一個を担保に供して金十万円を借用し、右年金をもつて弁済に充当する旨約束し爾来右徳太郎が被告人所有の前記年金証書一通を占有していたところ、同年十二月二十六日頃、右徳太郎方に於て、同人妻津田ヌイに対し、後日返済の意思がないのに、「国民金融公庫奈良支部より年金証書を持参するよう通知が来た明日必ず返すから一寸貸してくれ」と恰も翌日返済するかのように嘘の事実を申向けて、その旨同人をして誤信させ、因て即時同所において同人より寸借名義の下に津田徳太郎の占有する自己所有の公傷年金証書一通の交付を受けてこれを騙取したものである。

一、証拠の標目(省略)

一、前科

被告人は、昭和二十七年十一月十八日、大阪高等裁判所に於いて、横領罪により、懲役六月に処する旨の判決言渡しを受け、当時右刑の執行を受け終つたものである。右は彦根市役所の奈良地方検察庁五条支部に対する被告人の身上報告書及被告人の当公廷に於ける供述に依つてこれを認める。

一、法令の適用

被告人の判示所為は、刑法第二百四十六条第一項、第二百五十一条、第二百四十二条に該当する処、被告人には前掲の前科あるに付き、刑法第五十六条、第五十七条に依り、所定刑期に法定の再犯加重をなした刑期の範囲内において、被告人を懲役一年二月に処し、被告人が現在定職収入なく貧困なることはその当公廷に於ける供述によつて明かに付き、刑事訴訟法第百八十一条第一項但書により、訴訟費用は被告人に負担せしめない。

以上主文の通り判決する。(昭和三一年五月三一日奈良地方裁判所五条支部)

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